卒業式

胸に赤いリボンをつけるのは後輩の役目

3度ほど右に曲がった状態で

後輩は「よし」と言った

「卒業おめでとう」

朝から口々に言われるけど

何がおめでたいのかはわからない

だけど今日確実に最後になることはあって

頑張って感じ入ろうとしたけど

終わりなんてファンタジーのようで

いくら想像してもぼんやりしていた

 

からっぽの机に足がぶつかると

簡単に動いてしまう

もう何もない教室で

寒さだけが存在感をもつ

 

最後の会話、

視線を窓の外へ投げながら

本当は何も見ていなかった

ひとつ机を挟んだ右隣に

君が座っていて

なんて言えば笑ってくれるのか

驚いてくれるのか

悩んでくれるのか

私を、忘れないでいてくれるか

必死に考えて何かを言った

こっちを見向きもしないでつまらなそうに

何かを答えて君は遠くに行ってしまった

遠ざかる背中を

やっと2つの目で見れた

 

私も、私を、忘れて生きていくのだろうか

かっこわるくて下手で無力な私を忘れて

違う誰かと笑いあうのだろうか

 

最後の会話が思い出せない

そんな悲しみもどうでもよくなって

小さくなる君の背中のようにプツンと

消えるのだろうか