2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

どうか

「あの子はいいお友達をもったね」とお母様は私が手渡したノートを大事そうに胸に抱えた。「いえ、そんな」と咄嗟に返して俯く。本当にいい友達だったら生きてるときにもっと支えられたはず、でもそれは飲み込む。これは遺されたご家族のためだから、「あの…

一緒に

もう何がどうだっていいから君に会いたいな。世間は改元だなんだと騒いでいるけれど、私にとって時代は君がいた頃と君がいない今の二つしかないよ。どうだっていい、今まで考えてきたこと全部どうだっていいから、君に会いたい。君にしかできない話がある。…

悲しみ

あまりにも大きな悲しみを抱えていると日常で出会う小さな悲しみを軽んじてしまって、そのバチが当たったのか、そこらへんに適当に放っておいた悲しみに躓いてこけた。『よく生きる』ことは大切だし、その営みは貴い。だけど、よく生きようとしすぎると人間…

現実

死んだと思った人が生きてたって物語は希望そのものだけど、一部の観客/読者にとっては絶望でしかない。否定したい訳じゃない、むしろ誰よりもそんな奇跡を望んでいるからこそ、そして現実では起こり得ないとわかっているからこそ、否定せざるを得ないのだ。…

やさしさ

「うんうん」「えらいね」「それで?」って話を聞いて、相手が言って欲しそうなことを言って、弱ってるときは優しく声をかけて。そういうことを続けていたら好かれた。そして心が汚れた。常に目の前の誰かに対して「○○してあげる」姿勢になっている自分が気…

遺されて

大事な人を亡くしてから、心の機微や細やかな所作を捉えられなくなった。怒らなくなり、こだわらなくなり、諦めるようになった。それがいいのか悪いのか、強さなのか弱さなのか、正しいのか間違いなのかはわからない。すべてかもしれない。ただなんだか私の…

その価値を知らない人からしたら「そんなこと」じゃないですか。でも人は「そんなこと」で生きようと思ったり、死のうと思ったりする。今、何十億の歴史を経て何十億の個体が息をしています。確かに人の命は取るに足らないものであり、したがってすべてのも…

こんな酔いぐらい大人はちゃんと管理するべきであって、言い訳にしてはいけないのです。大人はいつなんどきもちゃんとせねばいかんのです。一度大人になった以上死ぬまで大人であることを踏まえれば、私は死ぬまでちゃんとしなければいけないのです。そうで…

仕事

埃くさい小さなオフィスで野暮ったい制服着ながらパソコンとにらめっこしてるのが私。そんでこれが私の仕事。地味ですねって?反論はいたしません。誰が見たって地味ですもの。今は沖縄の取引先へメールの返信を催促する文章をどこすかどこすか打ち込んでる…

だから

正直言えば、身体の線の内側にある自分はなくなっても大して惜しくない。そりゃ今すぐは嫌だけど、近い将来にはきっと。じゃ何が惜しいかって、身体の線からはみ出した自分。ずっとずっとこれからも広がっていくもの。千年万年かけてその経過を見ていたいけ…

次の日

私が死んだ次の日に駅前で自転車が盗まれた。 女子高生が川沿いを走っていた。 太った猫がくしゃみをした。 空き缶が車に潰された。 交番のお兄さんが暇そうだった。 サラリーマンが道路でしゃがんだ。 祖母に手を引かれた少女が空を見上げた。 私が死んだ次…

おいしそう

夕飯でイクラをご飯にかけた。 白いご飯の上できらきらと光るイクラを見るだけで涎が出てくる。 おいしそう。 でもこれをおいしいものとして認識している国は世界にどれぐらいあるんだろう。 オーストラリアの友人は魚卵を気味悪そうに見ていたことを思い出…

イノセント

恋愛の仕組みがもう少し単純で、より長く見つめられた者が勝利するというゲームだったら、私は三年間負け続けていて対戦相手は自覚もなく勝ち続けていた。 今私の前にいる因縁のライバル、木月の瞼はほぼ閉じかけていて、知らない人が見たら眠そうとしか思わ…

2018

喪中につきご挨拶を控えさせていただこう…と思って閉じてた訳ではなく、諸般の事情につき遅い挨拶となりました。あけきってますね、今年もよろしくお願いします。 私は行事や節目が大好きで、大晦日や元日なんか毎年えらい盛り上がって祝ってたんですが今年…