帰省

東京も、高いところから見ると空が広いんだ。高速バスの大きな窓から見えるビル群は相変わらず身体に刺さったら痛そうな形状だけど、紫ともピンクともつかない夕暮れの光を吸収していつもより素朴な佇まいをしていた。鼻がつくぎりぎりまで窓に近寄って首の座ってない赤子のようにずっと上まで覗いてみても、雲も電線も飛行機さえもなくて、空の裸を見ている気分になった。昼前に出発してもう夕方。ここから電車に乗り換えるから目的地に着くのは夜だろう。帰省するだけで半日かかることも1ヶ月のバイト代が飛ぶことも嫌で、5年前はお金と時間の無駄なんて言ってたなぁと思い出して苦笑する。人は変わるもんだと、前の席の背もたれにかけたお土産の袋を眺めて思う。持て余していた郷愁は心のなかで居場所を見つけたようで最近はうまく共存している。帰ったら何をしようかな。そんなことを考える余裕まで出てきたけど、どうせ実家は眠くなってばかりなのであまり計画を立てすぎるのもよくないだろう。次から次へと食べ物が出てくるのは目に見えているので太らないように気を付ける、それぐらいの目標を持っていよう。明日は私の誕生日。お母さんのご飯が楽しみだ。