どうか

「あの子はいいお友達をもったね」とお母様は私が手渡したノートを大事そうに胸に抱えた。「いえ、そんな」と咄嗟に返して俯く。本当にいい友達だったら生きてるときにもっと支えられたはず、でもそれは飲み込む。これは遺されたご家族のためだから、「あの子はいいお友達がいて幸せだった」と思ってもらうためのものだから。どうか幸せに、幸せになることに負い目を感じずに、暮らしていってほしい。30も上の方にそんな思いを抱くこと自体不遜なのかもしれないけど、でもこれが私の精一杯。そしてそれは私自身にも思っていることだから。どうか、やさしい人が他人と自分に分け隔てなくやさしくなれますように。