もしも

鏡はきらい。

自分の顔からできるだけ意識を離していたい。

私は小さい頃から美しくなくて、

まぁ一言で言えばブス。

小学校2年生のとき隣の席のゆうとくんが言った

男の子は笑った、女の子は怒った

その言葉、ブス。

そのときにはじめて自分がブスだって知った。

顔が急に熱くなった。

それから私は頑張った。

慎重に、慎重に、生きた。

 

好きな色はピンクだけど言わない。

ピンクを好きって言っていいのは私じゃない。

集合写真はなるべく人の後ろに隠れる。

だから「もっとこっち向いて」なんて言わないで。

コイバナはなにも言わないで微笑む。

好きな人はいるけど誰にも言ったことない。

 

部屋は私だけのお城。

ハート型のポーチにきらきらのランプシェード

かすみ草のドライフラワーに友達からもらった手紙。

別に何も恨んでない。ちょっと残念だっただけ。

ご飯はおいしいし友達はやさしいし毎日それなりに楽しい。

 

それでも寝る前、少しだけ夢を見ることがある。

もしも私がかわいかったら。

エストがきゅって細くなったワンピースを着るの。

ターンをしたら裾がふわって浮かんでポニーテールも揺れる。

どこにでも行けそうな長い脚、それと耳の後ろに少しだけコロン。

黒目も唇も指先もうるうるしちゃって、すれ違った男の人がどきってする。

でも私はそんなのには目もくれずに走っていくの。

誰にも言えなかった気持ちを

あなたに聞いてもらえたら、それだけで、私。

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