夜空

わざと自信がなさそうに振る舞ったって、感情のスイッチを切って作業をしたって、それっぽい物を作る技術が身に付いたっていずれ死ぬんだよ。いずれ死ぬのに今私はどうしようもなく生きていて、どうしようもなく生きているからまた同じことを繰り返す。ゴムみたいに伸びた毎日を首にくくって天井からたらしても足が床についちゃってね、間抜けなものですよびよーんと。仕方なく座り込んで窓の外を見る今日は土曜日。雲の隙間から少し欠けた月が見えるけど、明るすぎて電灯みたいなのでありがたみがない。おじいちゃん、人生だの人間だの語ったことのないあなたはこんな私を見たらどう思うかな。夜空を見て故人を思うなんてありきたりな思考回路だけれども神も仏も信じていない私がこの散らかった部屋でおじいちゃんを思うのにふさわしい場所はやっぱり夜空な気がした。大人が下手なことを下手なままでいるって難しい。上手になっていく自分は寂しい。だから私はおじいちゃんのことをいつまでもだだっ子のように弔わないことでバランスを保っているのかもしれなかった。