(ノン)フィクション

「もう行くから」と肩をたたかれる。 今目覚めたふりをして「ん」と目を開ける。 朝ははじまりのようでおわりだ。 もうちょっといればいいのに、と言いかけたけど 甘い感情が完全に消えた彼女の顔を見て口を閉ざした。 外は雨。 朝とは思えない暗さに心が落…

思い出

「コーヒーだよ、コー、ヒー」 みんなはえええっと声をあげて、信じられないものを見たような顔になった。 わたしもすごく、びっくりした。 まりんちゃんはなぜか恥ずかしそうにうつむいた。 「コーヒー!だよ!パー、ティー、って言うべや!」 「やっぱ東京…

針・羽・秘密

ねむい。 さっきから世界が上下して何度も机に頭をぶつけている。 いけない、隣の席は愛しの雪野さんだからな、よだれとか垂らせない。 雪野さんは今日も一つ結び。髪の生え際の産毛がよく見えて最高だ。 一週間前に席替えしてから雪野さんが話しかけてくれ…

紀久

1年ぶりに会った妹の装いに私は言葉を失った。 オフショルダーのトップスにレースの膝丈スカート、手にはクラッチバッグ。 「きくちゃん…それなに…」 やっとのことで絞り出した声に紀久は 「なにってなに」 とめんどくさそうな顔で返した。 「いつからそん…