(ノン)フィクション

星影

失った記憶もただれた顔も すべてを奪うことはできなかった 引き寄せられた身体は 境界線をなくして昇っていく 一番はじめに見つけて 君に光る私

触らないで 泣いたって 崩れてるわけじゃない 天に伸びるその姿と 平行を保って 一緒にいて

ビール

ダサいと思ってた大人に年を取るほど近づいてく。年下の経験と自分の経験を区別できなくなって物知り顔で諭してくるジジイが未来の自分に見えて殴りたくなる。暇でもないのに暇をつぶすために見たくもない画面を見る昼休みは、旅行、人との出会い、充実、や…

もしも

鏡はきらい。 自分の顔からできるだけ意識を離していたい。 私は小さい頃から美しくなくて、 まぁ一言で言えばブス。 小学校2年生のとき隣の席のゆうとくんが言った 男の子は笑った、女の子は怒った その言葉、ブス。 そのときにはじめて自分がブスだって知…

19

雨。買ったばかりのスニーカーが濡れてテンション下がる。傘の柄を肩にかけてしゃがみ、爪先の泥を指ではじく。あー、まだかなバス。100m先に見える曲がり角を睨んでみても思い出したようにぽつぽつと車が現れるだけでバスらしき音さえしない。 スマホに視線…

関係には名前をつけなければいけないような気になるけど、本当はそんな必要はない。視線や沈黙を思い出す秋、木曜日、朝。わかりづらいことはわかりづらいままにしておくことにした。私たちは明日のプレゼンで発表されるわけでも、今週末の結婚式のスピーチ…

二人

クルマがざるを持ってかまえると、ハバは麺の入ったお湯をそそいだ。 湯気の立ち上る流しでクルマは数回ざるを振り、ハバがそばに置いた平たい皿に中身を出した。 今日のお昼はハバの好きな酸っぱい麺だ。 クルマは酸っぱい麺が好きでも嫌いでもなかったが、…

17

前髪がきまらない日は学校行きたくない。かわいくなきゃ世界とかどうでもいい。誰のためでもない、ましてやあんたのためなんかじゃない。あたしはあたしのためにかわいいだけ。「恋する乙女」も「無限の可能性」もそっちの都合でしょ。愛とか夢とかたいした…

一人

丈の短いスポーティな紺のワンピース。裾がほんのりと透けてる白レースのスカート。アニメのキャラクターが真ん中に大きくプリントされた白のTシャツ。黄色地に水色のストライプのだぼっとしたシャツ。体のラインを強調する露出度の高い黒のワンピース。 す…

「もう行くから」と肩をたたかれる。 今目覚めたふりをして「ん」と目を開ける。 朝ははじまりのようでおわりだ。 もうちょっといればいいのに、と言いかけたけど 甘い感情が完全に消えた彼女の顔を見て口を閉ざした。 外は雨。 朝とは思えない暗さに心が落…

思い出

「コーヒーだよ、コー、ヒー」 みんなはえええっと声をあげて、信じられないものを見たような顔になった。 わたしもすごく、びっくりした。 まりんちゃんはなぜか恥ずかしそうにうつむいた。 「コーヒー!だよ!パー、ティー、って言うべや!」 「やっぱ東京…

針・羽・秘密

ねむい。 さっきから世界が上下して何度も机に頭をぶつけている。 いけない、隣の席は愛しの雪野さんだからな、よだれとか垂らせない。 雪野さんは今日も一つ結び。髪の生え際の産毛がよく見えて最高だ。 一週間前に席替えしてから雪野さんが話しかけてくれ…

紀久

1年ぶりに会った妹の装いに私は言葉を失った。 オフショルダーのトップスにレースの膝丈スカート、手にはクラッチバッグ。 「きくちゃん…それなに…」 やっとのことで絞り出した声に紀久は 「なにってなに」 とめんどくさそうな顔で返した。 「いつからそん…